過体重や肥満の女性に胡桃を豊富にとり入れた高脂質・低炭水化物食を1年間続けたところ、悪玉コレステロール値は低下、善玉コレステロール値は増加したことが米国カリフォルニア大学サンディエゴ校の報告で明らかになりました。また、オリーブ油のような健康的な油を含む地中海式食と、低脂肪高炭水化物食が、減量に同様の効果をもつことがわかったということです。
具体的には、多価不飽和脂肪酸の多い胡桃が豊富な食事は、女性の血中コレステロール値に大きく影響を与えた。特にインスリン抵抗性のある女性にはその効果が大きかった。米国では、40 歳以上の28%が、高脂血症薬を飲んでいるという。減量や飽和脂肪酸の摂取量を減らすという生活様式の変化は、「悪玉」と呼ばれるLDL コレステロール値の低下と関連があるが、飽和脂肪酸を、他の不飽和脂肪酸や炭水化物に置き換えてまで、脂肪の摂取量を減らす必要はあるのだろうか。「この研究で、健康的だと言われているキャノーラ油やオリーブ油は、善玉コレステロール値も悪性コレステロール値も下げることを明らかにした」と、主任研究者のシェリル・ロック博士は述べている。研究チームは、過体重や肥満の女性を対象に、1 年間の減量プログラムを行い、ランダムに3 群に振り分け、それぞれ以下の食事を摂ってもらった。低脂質・高炭水化物食、低炭水化物・高脂質食、胡桃を豊富に取り入れた高脂質・低炭水化物食である。その結果、6 カ月時の平均体重減少は、全ての食事で同様に起こり、各群とも8%低度であった。インスリン感受性のある女性は、低脂質食だった場合に、一番体重が低下した。一方で、胡桃の豊富な高脂質食は、LDL コレステロールを最も低下させ、HDL コレステロールが増加した。植物油に多い一価不飽和脂肪酸を多く含む高脂質・低炭水化物食では、胡桃を豊富に取り入れた高脂質食と同様の効果は得られなかった。
「この程度の減量は、理想体重には程遠いが、心血管疾患や他の疾患のリスクを低減するだろう。この程度の減量は実現可能であり、それは彼女らの生活の質に劇的に影響を与えるだろう」とロック氏は述べている。過体重の人々は、インスリン抵抗性を持っている場合が多いため、インスリン感受性を評価した。大量のインスリンは、前駆細胞のがん化を促進する可能性がある。「食品の構成が、血中脂質の状態に影響を与える。しかし、減量の重要な点は、摂取カロリーを抑えるより、消費カロリーを増やし、それを維持すことである」とロック氏はまとめている。2016.2.1 , EurekAlertより
出典は『米国心臓学会雑誌』。 (論文要旨)
インスリン抵抗性とは
インスリン抵抗性とは肥満や高血圧などが原因で、インスリンが体の中でうまく働かなくなる状態のことで、インスリン抵抗性があると、食事で高くなった血糖値を感知して、すい臓からインスリンが分泌されても、筋肉や肝臓が血液中のブドウ糖を取り込まないため、血糖値が下がらず、糖尿病の原因になります。血圧やコレステロール、脂肪の代謝にも関係しているといわれていて、メタボリックシンドロームにもつながってしまいます。
脂質、炭水化物を減らす食事はダイエットに効果的
この報告から言えることは、インスリン抵抗性のある方の場合、多価不飽和脂肪酸を多く含む食事+低炭水化物食が減量に効果的であり、インスリン抵抗性のない方の場合は、反対に低脂質食の方が体重の減少につながるということです。長期間無理なく継続するためには、脂質が抑えられる和食や低カロリーな野菜を積極的にとる、噛む回数を増やすなどの工夫をすると、満足感を得ながらお肉やバターなどの脂質や、主食の炭水化物を減らすことができます。
胡桃のパワー
胡桃には肥満や高血圧、糖尿病などの予防に役立つ多価不飽和脂肪酸であるαリノレン酸が豊富に含まれています。αリノレン酸は体内に入ると魚油に豊富に含まれるDHAやEPAに変換されます。血流改善、血栓予防に加え、血圧を下げたり、アレルギーを抑制する効果も期待できます。αリノレン酸は必須脂肪酸で、人間のからだでは合成できないので、食べ物からとる必要があります。胡桃以外にも亜麻、エゴマ、微量ですがほうれん草からもとることができます。不足しがちな栄養素なので、ダイエット中であるないに関わらず、意識してとるようにすると生活習慣病予防にもつながります。ただ100g674kcalと高カロリーなので、1日10かけ(20g)までを目安にとると良いでしょう。胡桃はαリノレン酸はが多いため酸化しやすいので、むき身であれば食べきりサイズを選んだり、密閉状態を保つように保存してください。殻付きであれば日陰で使う直前までむかないのがおすすめです。
まとめ
ダイエットは無理なく、継続できることが大切です。極端に炭水化物や脂質を抑えることは避け、バランスの良い食事を心がけましょう。いつもの食卓に胡桃を加えて、αリノレン酸も上手にとり入れていくのはいかがでしょうか。
参考資料
カリフォルニアくるみ協会HP
Author Profile
- 管理栄養士
- 2010年管理栄養士を取得。社員食堂栄養士、栄養相談員、商品開発など経験するなかで「食べたものが自分をつくっている」ということを改めて実感し、食に関する知識や栄養のバランスがとれた食事の大切さを日々発信している。食いしん坊の1児の母。
Latest entries
2018.01.24コラム香りや風味だけじゃない!ハーブの健康効果!
2018.01.22コラム今からでも間に合う!正月太りを解消できる食事法
2018.01.18コラム食物繊維のススメ!生活習慣病予防のための心強い味方!
2018.01.17コラム便秘予防だけじゃない!ヨーグルトの6つの健康効果