日光をよく浴びている人は皮膚がんのリスクが懸念されるが、実際には日にあまり当らない人よりも長生きすることがわかったという、スウェーデン・カロリンスカ大学病院の研究報告がありました。
この研究では、2万9千人以上のスウェーデン女性を20年間に渡り追跡調査し、日光に当たる習慣の程度によって3群に分けて比較分析した。すると、最も日光に当たる習慣のある群の人たちは、他の群に比べて寿命が長いことがわかった。また、心臓病や非がん・非心臓病による死亡が減少したが、そのためがんによる死亡は相対的に増加する結果となった。今回示された、日光を浴びることの有効性はビタミンDによるものなのか、または他の要因によるものなのかはわかっていない。そのため、さらなる研究が必要だろう。美肌のために・・・と日差しを徹底的に避けている方、少し気を付けた方が良いかもしれない。
日光浴をすると体内でビタミンDが合成される
日光にあたることで、コレステロールを材料にして体内でビタミンDが合成されます。脂溶性ビタミンであるビタミンDは、消化管でのカルシウムやリンの吸収を促進し強い骨を作る働きがあり、骨粗鬆症の予防や治療、動脈硬化予防に効果があるほか、血圧を下げて心臓病や脳卒中などの発症も抑えられるとの研究結果があります。また、免疫力を上げる作用があり、がんの発症リスクを下げる効果があるともいわれています。妊娠期にも必要なビタミンで、赤ちゃんの骨の発育に影響を与えます。
日光浴は日陰で30分程度
日常生活で浴びている紫外線は、南に行くほど強く、また、1年を通しては4~9月、1日の中では午前10時~午後2時が強くなっています。紫外線は、太陽から直接届くものだけではなく、空気中に散乱しているもの、地面などで反射しているものがあります。紫外線の反射は、日陰では日向の50%、屋内は屋外の10%以下になります。紫外線環境保健マニュアル2008によると、日光浴は日焼けをするほどする必要はなく、両手の甲くらいの面積が15分日光に当たる程度か、または日陰で30分くらい過ごす程度が、食品からのビタミンD摂取量と合わせて十分な量を供給されると思われるとのことです。
ビタミンDを含む食品
2015年日本人の食事摂取基準によると、1日のビタミンD摂取の目安量は、成人で5.5㎍となっています。日光に当たる機会が少ない場合などには、食品からビタミンDを摂取すると良いでしょう。ビタミンDを含む食品は、鮭、マグロ、サバ、サンマなどの魚類や、くらげや干ししいたけなどのきのこ類です。
まとめ
日光にあたると、紫外線によりシミやしわの原因となったり、皮膚がんになる危険があると言われますが、丈夫な骨作りや血圧降下、免疫力向上に効果があるなどメリットもあります。むやみに日差しを避けるのではなく、季節や時間を考慮し、また帽子や日傘、日陰をうまく利用すると良いでしょう。今回の研究結果を参考に、外に出て適度に日光にあたる時間を作って、長生きできる身体を目指してみてはいかがでしょうか。
参考文献
厚生労働省「統合医療」に係る情報発信等推進事業 「統合医療」情報発信サイト
環境省 紫外線環境保健マニュアル2008
保健指導リソースガイド
Author Profile
- 管理栄養士 / 調理師
- 総合病院にて厨房・調乳業務や個人病院にて栄養指導に従事。「栄養士は栄養学だけ。」にならない、おいしいレシピの提案を目指す。現在は、フリーランスとして書籍やコラムの執筆協力やレシピ作成等の活動をしている。
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