一時期ブームとなった塩麹と醤油麹ですが、味噌や醤油、甘酒などと同じ発酵食品であることはご存じでしょうか。料理をおいしくするだけではなく、麹をもとに作られているので健康効果も高いと言われています。そんな万能調味料の塩麹と醤油麹について迫ってみましょう。
麹とは
塩麹と醤油麹を作るには、米麹が欠かせません。麹は、蒸した米に白っぽく身体によいカビである麹カビを付けて、25~30℃で湿度60~70%の糀室に入れてかき混ぜながら48時間で出来上がります。この麹をもとにして、味噌、醤油、甘酒、日本酒など、古くからある発酵食品が作られます。塩麹や醤油麹も麹がもととなり作られる発酵食品で、麹が炭水化物を分解してタンパク質をうまみに変えることで、おいしさが生み出されています。麹菌は、2006年に日本醸造学会により「先達が長い間大切に育み、使ってきた貴重な財産」として、国菌に認定されました。また、3大栄養素の代謝に関わるビタミンB1、B2、ナイアシン、ビオチンなどのビタミンB群を増やす効果もあるので、疲労回復や美肌づくり、血行をよくする効果も期待できます。
おいしくなる理由があった!
塩麹や醤油麹に肉や魚を漬けておくと柔らかくなると聞いたことがありませんか。麹かびによって作られたプロテアーゼが、筋原繊維を分解するために柔らかくなると考えられています。また、含まれるアミノ酸が食材にしみこみやすいだけでなく、酵素のペプチターゼの働きにより、うま味成分のグルタミン酸が増えるためうま味がアップします。醤油麹は、塩麹よりグルタミン酸が多く含まれています。さらに、柔らかくなるだけでなく味付けも決まるので、鶏肉の唐揚げなどの下味に使うとおいしく仕上がります。ほかにも苦みのある生野菜などに使えば、塩味により苦味などを和らげる効果があるほか、甘みも含まれているのでコクが増しておいしくなります。混ぜ合わせて漬け物に、また和え物、炒め物、煮物などの味付けやドレッシング代わりにも使うことも出来るので、何にでも使える万能調味料と言えるでしょう。
塩麹、醤油麹は手作りも可能
作り方も簡単です。塩麹は、米麹3:塩1:水3~4の割合で、醤油麹は米麹150gと醤油180ccをよく混ぜ合わせます。このとき、米麹はよくもみほぐしてから混ぜ合わせて下さい。清潔な密閉容器に入れ、どちらも常温に置いて1日1回かき混ぜ、10日~2週間でできあがりです。気温の暖かい方が発酵が進みやすいので、出来上がりは夏は早く、冬は遅くなることもあります。出来上がったら冷蔵庫で保存して下さい。すぐに使わない場合は冷凍保存も可能で、自然解凍をすれば酵素の働きなどに変わらないとのことです。また、塩は精製されていない天然塩を使うとよいそうです。
まとめ
麹カビのもつ酵素力で、食材の良さを引き出す調味料が作られています。先人の知恵とは偉大なものだと実感できます。麹は、高温で加熱してしまうと酵素が働かなくなるので、高温加熱をしないようにしましょう。うまみいっぱいの塩麹と醤油麹を活用して、豊かな食生活を送れるとよいですね。
参考資料
旨みを醸し出す麹のふしぎな料理力
最新版からだに効く栄養成分バイブル
日本醸造学会
ヤマサ醤油株式会社
マルコメ株式会社
有限会社加藤醤油 塩糀・醤油づくり講座
Author Profile
- 管理栄養士 / 調理師
- 総合病院にて厨房・調乳業務や個人病院にて栄養指導に従事。「栄養士は栄養学だけ。」にならない、おいしいレシピの提案を目指す。現在は、フリーランスとして書籍やコラムの執筆協力やレシピ作成等の活動をしている。
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