リポ多糖類結合たんぱく質(LBP)の血液添加が2型糖尿病の新しい治療法の確立に大きな可能性をもたらしたという南アフリカ・ステレンボッシュ大学などからの研究報告がありました。
リポ多糖類結合たんぱく質(LBP)を2型糖尿病患者の血液に添加すると、有害な血液凝固塊構造が正常化し、それは走査型電子顕微鏡と超解像度共焦点顕微鏡の両方で確認された、という南アフリカ・ステレンボッシュ大学などからの研究報告がありました。
研究チームは、先行研究において、正常な血液にリポ多糖類(LPS)を添加すると異常な血液凝固塊が形成され、それがLBPによって正常化することを示していた。LBPは全てのヒトに存在するものだが、2型糖尿病のような炎症が起きている状況下では、大量のLPSが、LBPの正常な働きを妨げている可能性が高い、と主任研究者のレシア・プレトリウス教授は述べている。
マクロファージが感染予防
LPSはグラム陰性細菌の外膜成分で、毒素を持ち、腸管から血液に入り発熱や炎症を引き起こします。高脂肪食を摂ると腸管の慢性炎症を引き起こし、血糖値を下げる働きをするインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性を高める原因であると分かっています。LPSはLBPと結合してマクロファージ表面のCD14に運ばれ、受容体TLR4、MD-2を介して認識され殺菌作用のあるマクロファージの免疫反応が増強されます。
甘いものを食べている、太っているだけで糖尿病になるわけではない
糖尿病は、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病に大別されます。以前はインスリン非依存型糖尿病と呼ばれていた2型糖尿病は、糖尿病患者の少なくとも90%と大半を占めています。2型糖尿病の発症は、膵臓からのインスリン分泌不足や、遺伝的にインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性に、過食・運動不足・肥満・ストレスなどの要因も関与し発症します。甘いものの食べ過ぎだけで発症するわけではありません。2型糖尿病と診断されると、まず食事療法や運動療法、生活習慣の改善から治療が始まります。
糖尿病患者は増加傾向
平成26年(2014)患者調査の概況によると、糖尿病の総患者数は316万6千人で過去最多の患者数となりました。平成20年(2008)からは増加傾向にあり、平成23年(2011)の前回調査時よりも46万6千人増加しています。男女別に見ても、患者数は増加しています。世界的に見ても、IDF糖尿病アトラス第8版2017によると、糖尿病患者は4億2500万人で、成人11人に1人が糖尿病だと言われています。糖尿病患者の3分の2である3億2700万人は働き盛りの20~64歳で発症しています。また、IDFで日本が属している西太平洋地域は世界で最も糖尿病患者の多い地域で、1億5880万人の糖尿病患者がおり、今後も増加すると予測されています。
まとめ
毎年11月14日は世界糖尿病デーで、世界最大の糖尿病意識向上キャンペーンです。2006年には公式に国連デーとなりました。世界160カ国以上で行われているキャンペーンで、日本各地でもシンボルカラーであるブルーにライトアップされているところがあるようです。世界では、糖尿病の可能性がありながら成人2人に1人は診断を受けていないと言われています。今後も糖尿病に対する新たな治療法も研究されてくるかと思いますが、病気は早期発見・早期治療が望まれるので、1年に1度は健康診断を受けることをおすすめします。
参考資料
厚生労働省
世界糖尿病連合
IDF糖尿病アトラス
J-STAGE
国立研究開発法人 科学技術振興機構
糖尿病治療ガイド2016-2017