2 型糖尿病の人は、食後に歩行することにより、血糖値低減の有益性を最も得られるようだ、というニュージーランドのオタゴ大学からの報告。
ニュージーランドには、2 型糖尿病の人に対し、『1 日少なくとも30分歩く』というアドバイスがある。いつ歩くかに関する特定の時間は、アドバイスされていない。オタゴ大の研究では、時間を決めず1 回30 分の散歩をするより、食後に歩くことが、血糖値低減により良いことを示している。研究者らは、2 型糖尿病患者41 名に対し、2 週間、1 ヶ月間の休息期間をあけ、歩行を処方するという、クロスオーバー比較試験を行なった。対象者は、身体活動を測定する加速度計と5 分毎に血糖を測定する装置を装着し、ガイドラインの助言のように、①時間を決めず1 日30 分歩くか、②それぞれメインの食事後10 分間歩くか、どちらかで歩行した。結果は、1 日のうち時間を決めず歩行するというアドバイスと比し、食後歩行のアドバイスに従った際、食後血糖値は平均して12 パーセント減少したことがわかったという。
「夕食後(炭水化物が最も多く、座位時間が最も長かった)に歩いた際に、この善が最も顕著で、血糖が22 パーセント減少していた」と、レノルズ博士は述べている。
「2 型糖尿病の管理において、食後ブドウ糖が重要な目標と考えられている。全体の血糖コントロールと心血管リスクへ、独立した寄与を与えられる」と、責任著者のジェームズ・マン教授は述べている。
「食後の身体活動は、食後のグルコースレベル低減のために処方された総インスリン投与量の増加、追加の食事時間のインスリン注射の必要性を回避する可能性がある。インスリン投与量の増加は、ひいては、2 型糖尿病の患者の体重増加と関連する可能性がある。患者の多くは、既に過体重か肥満である」と研究者らは記している。
「特に食事に炭水化物を多く含有する際、現在のガイドラインは食後の身体活動として指定するよう訂正されるべきである、と食後の身体活動に関する有益性は示唆する」と彼らは結論を述べている。
2016.10.18 , EurekAlert より論文要旨
血糖値が上がる、下がるメカニズム
血糖値はどのようにして上がって、どのように下がるのでしょうか。そのメカニズムを見ていきましょう。
食事をすると、ご飯や麺、パン、いも類などの炭水化物が分解されてブドウ糖になり、血液中に取り込まれ脳や筋肉、内臓など体の様々な組織のエネルギーとして使われます。この血液中のブドウ糖を「血糖」と言います。血糖の量は食事のほか、様々な原因によって変動しますが、健康な人の体内では変動する血糖が上手にコントロールされ、いつも一定の幅の中で保たれています。それは膵臓から出るインスリンというホルモンが、血糖をエネルギーとして利用したり、蓄えたり、タンパク質の合成を促したりしているからです。
健康な人の場合、食後1~2時間くらいすると食事で上がった血糖値は下がるのですが、インスリンの量が少なかったりや分泌されても上手に働くことができなくなると、血糖値が下がりにくくなってしまい、ブドウ糖が血液中に漂ったままの状態になってしまいます。これが高血糖の状態です。
食後血糖値を緩やかにする食事のポイント
食後血糖値を下げることを意識することも大切ですが、食後血糖値を急上昇させないようにすることも大切。ポイントは2つです。
1.野菜から食べる
野菜から食べることで、食物繊維が栄養を吸収する腸に壁をつくり、糖の吸収を緩やかにしてくれます。最も避けたいのは1口目ご飯やパン、麺など糖質が多く含まれる食品から食べること。糖質がどんどん吸収されて、食後急激な血糖値の上昇を引き起こしてしまいます。この血糖値の急上昇はインスリンの過剰な分泌を促します。インスリンは一生のうちに分泌できる量が決まっているので、使いすぎてしまうと必要な時に分泌されにくくなって、血糖値のコントロールが難しくなってしまいます。
2.1日3食規則正しく
こちらも1と同じく、血糖値の急上昇を防ぐために大切なポイントになります。1食抜いてしまうと次の食事で血糖値が上がりやすくなります。なるべく欠食はせず、3食きちんと食べるようにしましょう。どうしても食べられないときや食事の間隔が空きそうなときは、間食にナッツやチーズ、ヨーグルト、大豆粉やふすま粉を使った低糖質のスイーツなどを食べて、お腹が空きすぎないように工夫するといいですよ。
まとめ
オタゴ大学の報告では2型糖尿病の方は1日の中のどこかで30分歩行するよりも、それぞれの食事後10分の歩行が血糖値を下げるのに効果的とありましたが、食後に血糖値が高くなる人は、毎食後からだを動かすことで血糖値の上昇を抑えられるということは日本でも実証されています。食後15分間は、食べ物の消化吸収をよくするため、血液が胃や腸に集まります。血液が手や足の筋肉に使われ、胃や腸の働きが鈍くなると、糖の吸収が遅くなり、血糖値が抑えられるというわけです。ウォーキング程度の軽い運動が最も好ましく、掃除機をかける、床を磨く、お風呂掃除などの家事をするのも効果的だそうです。体を動かすことで血糖値の上昇を抑え、食事のとり方も工夫していくと、糖尿病の方に限らず、健康な方の将来の糖尿病リスクの軽減につながります。食後は一休み…の時代から食後は歩こうの時代がやってくる日も近いかもしれませんね。