昨年改定されたばかりの欧州と北米の血圧治療ガイドラインは、アジア人患者の、特に高齢者のために適用されると脳卒中リスクを実際に高めるだろう、という伊アッシジ病院の専門家によるオピニオン。
高血圧は脳卒中の鍵となるリスク因子だが、アジア人は両者の結びつきが欧米人に比べてかなり強いようだという。
アジアでも過去30年、特に西洋風の生活様式の普及によってここ10年来、高血圧患者数は急速に増加している。アジア人の高血圧は、薬物治療、合併症リスク、アウトカムなどにおいて独自の特徴を有している。特に西洋人に比べて脳卒中の罹患率と死亡率が不釣り合いに高いことが挙げられるという。「最近欧州と北米で根拠に基づく質の高いガイドラインが発表されているが、アジア人高血圧患者のユニークな特徴は、こられのガイドラインがアジア人に対して実際の臨床現場で適用可能かどうかという懸念を投げかける」と著者らは述べている。
例えばガイドラインでは、心血管疾患と腎疾患のリスクの高い患者に対して140/90mmHgを目標に置くように述べているが、これはアジア人には高すぎるものだと著者らは言う。アジア諸国のガイドラインの中には、これらの患者により厳密な血圧コントロールを推奨しているものもあるという。高齢のアジア人患者の場合は特に問題が多いという。欧米のガイドラインの推奨する血圧レベル150/90 mmHgでは、脳卒中のリスクをむしろ高めるというのである。140/90 mmHg以下に設定することがより望ましいと著者らは示唆している。欧米の血圧ガイドラインはアジア人の脳卒中リスクを高める
2015.12.4 , EurekAlert より
日本人の血圧目標値
日本では、2009年に改訂された日本高血圧学会による「高血圧治療ガイドライン2009」を基準として血圧の目標値が設定されています。
診察室血圧が140/90mmHg以上、家庭血圧が135/85mmHg以上を、「高血圧」としています。なお、糖尿病などの慢性疾患がある場合は基準値が低めに設定されています。これは、海外での一般的なガイドラインより厳しめといえます。
日本人の血圧状況
平成26年の国民健康栄養調査によると、収縮期(最高)血圧の平均値は、男性 135.3mmHg、女性 128.7mmHg となっており、この 10 年間でみると、男女ともに有意に低下しています。また、収縮期(最高)血圧が 140mmHg 以上の者の割合は、男性 36.2%、女性 26.8%であり、この 10 年間でみると、男女ともに有意に低下しています。収縮期血圧の平均値も、収縮期血圧140mmHg 以上の者の割合も減少傾向にあり、このため、脳卒中の死亡率は大きく低下したようですが、日本の脳卒中の発生割合は海外に比べてまだまだ高いようです。
高血圧を予防するには
高血圧の最大の負の因子とされるのが食塩の摂りすぎです。高血圧学会が提唱する塩分摂取量の目標値は1日6g未満です。調理法や味付けなどにもよりますが、よく食べる料理の平均的な塩分量は以下の通りです。
・味噌汁一杯・たくあん2切れ1.5g
・梅干し一個2.0g
・カレーライス一人前3.3g
・塩鮭一切れ3.5g
・にぎりずし一人前(しょうゆ込み)5.0g
・きつねうどん一杯5.3g
1日6g未満の塩分量を目標にしようとすると、かなり意識する必要があることが分かります。
日本人の食事の塩分量の高さも、脳卒中の発生割合の高さに影響を与えています。
減塩のコツ
新鮮な食材を用いて薄味調理
こしょうや七味・生姜・柑橘類の酸味を組み合せて減塩
お酢やドレッシング・ケチャップやマヨネーズなどの低塩の調味料を活用する
お味噌汁は具だくさんにしたりだしを濃い目にとる
外食や加工食品は一般的に食塩が多く使われていることを認識する
漬物は浅漬けにしてできるだけ少量に。漬物にしょうゆはかけない
テーブルに調味料はおかないようにする
麺類の汁は残しましょう。汁を全部残せば2~3gの減塩になります
まとめ
この文献では、日本人の脳卒中のリスクは欧米レベルの血圧ガイドラインでは回避できないことを示していました。今まで以上に減塩を意識する事で高血圧のリスクを減少させ、脳卒中の発生予防につなげましょう。
(出典:日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2009」、厚生労働省「平成26年 国民健康栄養調査」、日本高血圧学会「さあ、減塩」 より)