成人女性が過体重、肥満である期間の長さが、将来の乳がんや子宮内膜がんなど、がんのリスクが高くなるという結果が国際がん研究機関(IARC)とカリフォルニア大学などから報告されました。
今回の研究では、高BMI の持続期間と数種類のがんの発症リスクの量‐反応関連を特定するために、米国女性の健康イニシアティブ(WHI)を使用した。これまで過剰な体重とがんリスクとの関連を調査している多くの研究は、過体重と肥満における横断的情報を調査している。今回は、縦断的に調査された約74,000 人の女性(6,000 以上ががんと平均追跡期間12.6 年の間に診断された)の複数のBMI 測定値を使用し、肥満に関連するほかの要因(例えば身体活動、食事、喫煙、ホルモン使用、糖尿病)を考慮に入れ、過体重・肥満の持続期間とがんリスクとの関連を調査した。結果は、成人期、過体重であった期間が10 年間増加毎に、肥満関連がんのリスクが7%(95%信頼区間6%から9%)増加、閉経後乳がんのリスクが5%(95%信頼区間3%から7%)増加、子宮内膜症がんの発症リスクが17%(95%信頼区間12%から22%)増加と関連したという。過体重の強さで調整後、これらの数値は、閉経後乳がんで8%上昇、子宮内膜がんで37%まで上昇した。BMI は体脂肪の理想的な尺度ではなく、WHI のコホートは、非ヒスパニック系白人女性を多く含んでいる。研究デザインのこれらの側面が、今回の知見の一般化可能性の限界点となるが、今回の研究の大規模さと縦断的BMI データは、過体重である期間はがんの重要なリスク因子であるという説得力のあるエビデンスを提供する。「これが本当であれば、ヘルスケアチームは、がん予防における肥満管理の可能性を認識すべきであり、女性の体重過多は、患者の年齢に関係なく、管理することが重要であることを認識すべきである」と著者らは述べている。
出典は『プロス医学』。 (論文要旨)
BMIとは
Body Mass Index(ボディ・マス・インデックス)の略称で、身長からみた体重の割合を示す体格指数。日本では25以上を肥満と定めています。手軽にわかる肥満度の目安なのでぜひご自身のBMIを計算してみましょう。
BMI=体重kg÷(身長mの2乗)
日本ではBMIが22のときの体重が標準体重とされ、病気にもっともかかりにくいとされています。標準体重の計算式は以下のとおりです。
(身長mの2乗)×22
結果はいかがでしたか?
厚生労働省が定める日本人の食事摂取基準(2015版)で18~49歳は18.5~24.9、50~69歳は 20.0~24.9、70歳~は21.5~24.9と年齢別に目標とするBMIの範囲が提示されています。ただし、あくまでも「健康を維持し、生活習慣病の発症を予防するための要素の1つとして扱うに留めるべき」とされていますので、参考程度にしてみて下さい。
肥満を予防する3つのポイント
肥満を解消したり、予防するためには適度な運動ももちろん大切ですが、毎日の食事でできることもあります。これからご紹介する食事の3つのポイント、ご自身の食生活で実践できていますか?
①ゆっくりよく噛んで食べる
早食いをする人はそうでない人に比べ、3倍肥満になりやすいという研究結果があります。食べて始めてから、脳の満腹中枢がお腹がいっぱいというサインを出すまでには15~20分かかります。1口20~30回を目安によく噛んで食べる習慣をつけましょう。慣れるまでは1口食べたら箸を置くのもおすすめです。
②野菜や海藻類から食べる
野菜や海藻類から食べると血糖値の上昇が緩やかになるので、血糖値を下げ、中性脂肪の合成を促すインスリンが節約されるので、脂肪がつきにくくなります。野菜や海藻類に豊富な食物繊維は腸内環境を整えて便秘を予防してくれます。また、血液中の余分なコレステロールを排泄する働きもあるので、血液をきれいにし、代謝も良くしてくれます。
③定食スタイルを目指す
おにぎりとカップラーメン、パン2つにコーヒーといった偏った食事ばかりでは、健康的な体づくりは難しいです。そこで意識したいのが「定食」。定食は主食のご飯、肉や魚、卵、大豆製品を使った主菜、野菜がメインの副菜、汁物で構成されていますよね。この組み合わせは、エネルギーを生み出す「糖質」、体をつくる「たんぱく質」、体の調子を整える「ビタミン、ミネラル」が整いやすいのです。野菜や海藻類から食べることができますし、ご飯は他の主食に比べ腹持ちも良いので、余計な間食予防にもつながります。
例えば、昼食はパン2つが定番になっているなら、パンを1つにして主菜となる唐揚げ、副菜になるサラダをプラスすれば定食スタイルに近づきますよね!麺類なら主菜、副菜を兼ね備えた、五目あんかけやちゃんぽん、野菜ラーメンなどもおすすめです。
まとめ
米国の調査で、女性のみではありますが、ヒトでの大規模な研究結果であるので、信頼性は高く、年齢に関係なく肥満に対する認識をしっかり持ち、早めに対策をとっていくことが大切であるということがわかります。健康診断などで気になる数値があっても、症状がないからと放っておいてしまってはいませんか?肥満を予防することが将来のがん予防につながるということを頭において、毎日の生活の中でできることを実践していきたいですね。
参考文献
栄養の教科書 中嶋洋子監修
厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2015版)
Author Profile
- 管理栄養士
- 2010年管理栄養士を取得。社員食堂栄養士、栄養相談員、商品開発など経験するなかで「食べたものが自分をつくっている」ということを改めて実感し、食に関する知識や栄養のバランスがとれた食事の大切さを日々発信している。食いしん坊の1児の母。
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