年齢を重ねてからも健康でいきいきと生活するためには、食物繊維の量が関係しているということがオーストラリアウエストミード医学研究所の研究で明らかになった。
2016.6.9, EurekAlertより:
食物繊維をしっかり摂っている人は、歳を重ねても健康でいきいきと生活できる―豪州ウエストミード医学研究所の研究。加えて、炭酸飲料や加糖飲料の摂取量がきわめて少ないことも重要だということがわかったという。 「豊富に食物繊維を含む食事が、私たちの健康状態を『普通に』保ってくれる」ということは広く知られている。しかし、これは食物繊維に対する過小評価なのではないかと思うほどの驚くべき利点が、最新の研究により明らかになった。パンやシリアル、果物などからしっかりと食物繊維を摂ると、加齢に伴う病気や身体障害を予防するのを助けてくれるという。 今回の研究では、50歳以上、1600人以上を対象に10年間の追跡調査を行い、炭水化物の摂取状況(炭水化物の総摂取量、食物繊維の総摂取量、GI、GL、砂糖の摂取量)と健康的な加齢の関係についての調査を行った。ここでの「健康的な加齢」の定義は、身体障害や抑うつ症状、認知障害、呼吸器症状、がんや冠動脈疾患、脳卒中といった慢性疾患がないこととしている。 「炭水化物の中でも、人間が消化することのできない食物繊維の摂取量は、私たちが調査した全ての要素の中で最も強い影響がありました。食物繊維の摂取量が最も多い群の人たちは、長く健康的な生活を送れる確率が80%ほど高くなることが、10年の追跡調査でわかったのです。」「つまり、高血圧や糖尿病、認知症やうつ病、身体的障害に苦しむ可能性が低かったということです。」と研究者のゴピナス博士は話す。また、研究者らは砂糖の摂取量が健康的な加齢のためには最大の影響を持つと予想していたのだが、実際には炭酸飲料や砂糖入りの飲料がきわめて少ないことが影響していたという。出典は『老年医学雑誌シリーズA』
食物繊維の働きとは?
私たちが生命を維持してくうえで欠かすことができない、糖質・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラルを五大栄養素と呼びます。それらに加え食物繊維は第6の栄養素とまで言わる大切な栄養素とされています。一言で食物繊維と言っても大きく2つの種類に分かれ、水に溶けやすい水溶性食物繊維。水に溶けにくい不溶性食物繊維に分けられ、それぞれ体内での働きも異なります。
・水溶性食物繊維…血中のコレステロール値を低下させ、血糖の急上昇を防ぐ働きがあり余分な脂質などを吸着し、身体への吸収を抑制する働きがある。そのためダイエット効果としても注目されています。また、善玉菌を増やす働きもあり、整腸作用も期待できます。
・不溶性食物繊維… 腸を刺激して便通を促すため、便秘の解消に効果的です。身体にとって有害とされる物質を排泄する働きもあり、デトックス効果としても注目されています。
日本人の食物繊維摂取状況と必要量とは?
毎年発表されている『国民健康・栄養調査』によると、食物繊維は毎年摂取目標量を満たしておらず、最新の平成26年度版でも全世代・男女共に満たしていません。厚生労働省が発表している『日本人の食事摂取基準2015年版』での食物繊維の1日あたりの目標量は、成人男性 20g以上 成人女性 18g以上とされています。昔の日本人の食物繊維の摂取量は目標値以上でした。しかし、食生活の欧米化によりパン食や肉食などあまり食物繊維が含まれない食事が増えたことで、特に若い人の摂取状況が低く、どの世代でも食物繊維が不足する。という状況になっていると言えます。
食物繊維が多く含まれる食べ物とは?
先ほど、食物繊維にも水溶性と不溶性があるとお伝えしましたが、それぞれ多く含まれる食品も異なります。
水溶性食物繊維は野菜、果物、海藻、きのこ類に多く含まれています。
例)明日葉・モロヘイヤ・りんご・桃・イチジク・アボカド・なめこ・寒天・わかめなど…
不溶性食物繊維は繊維質な食べ物が多く、野菜、豆類、穀類に多く含まれています。固いものが多く咀嚼回数が増えるため、食べ過ぎ防止や、満腹感を得られやすいいと言った点からのダイエット効果も期待できます。
例)ごぼう・さつまいも・切り干し大根・とうもろこし・えんどう豆・あずき・大麦・アマランサスなど…
一言で食物繊維と言っても、それぞれ特徴があります。どちらもバランスよく摂取することが大切ですが、自身の悩みに合わせて意識的に食物繊維を毎日の生活に取り入れてみてください。また、便秘の方は食物繊維の摂取に合わせ水分摂取も忘れずに行いましょう。
参考文献
・平成26年度版「国民健康・栄養調査」
・日本人の食事摂取基準2015年版