犬の散歩は、高齢の方の身体活動レベルを引き上げるのに有効であるというイーストアングリア大学及びケンブリッジ大学による研究報告。
高齢者で定期的に犬を散歩させる環境にあるヒトは身体活動レベルが高くなり、とりわけ冬の間にその傾向が顕著に見られるという研究。イーストアングリア大学及びケンブリッジ大学の研究者らによって報告されている。研究によれば、犬を飼うことや犬の散歩をすることが最も高齢になってからの身体活動量の低下に打ち勝つ上で効果的であるという。悪天候があったとしても散歩には出かけるという事なので、通常のウォーキングよりも有効でさえあるかも知れないのだ。犬を飼っている人は平均で一日あたり30 分間の散歩をしていたという。調査では、3,000 人を超える高齢者に対して犬を飼っているかどうか、そして犬の散歩をするかどうかについて尋ねた。さらに、これらの被験者に対して体活動量計を7 日間装着してもらい、身体活動量レベルを測定した。日が短い冬期間であったり、天候不順などがあったりすると、外出を妨げる大きな要因となり得ることはよく知られている。そのため研究者らは被験者の活動量データを天候状態と照らし合わせ、また日の出と日没の時間を勘案して検討を行った。一般に、身体活動量は加齢とともに低下する傾向がある。しかしながら、現在までのところ、年齢を重ねても身体活動量を維持するのに役立つような効果的な方策についての研究は、行われてきていないのだ。研究者らによると、犬の散歩を行う人は身体活動量がより高く、さらに座業中心性時間も一般的に短い傾向があるとわかったという。このこと自体は予想されていた事であるが、研究者らによって検討された天候状態がどの程度身体活動量に影響を与えるかという点では、想定外な差異が生じていたのだ。つまり、天候が悪くても、犬を飼っている人は身体活動量が、そうでない被験者に比べて髙い傾向があったのである。さらに、日が短くなる冬期間はより寒くなったり天候が悪くなったりすることがあり、全ての被験者が傾向としては身体活動量が低下し座業中心時間が増大する。それでもなお、犬の散歩をする人たちはその影響が小さかったのである。こういった犬の散歩をするかどうかでの違いの大きさに研究者らは驚いていて、これらの差異は一般に定期的な身体活動を基準にして行われる介入試験で見られるような活動的な人と座業中心性生活の長い人との差異よりも、大きいものだったのである。研究者らによれば、このような効果性が期待できるからと言って、犬を飼うことについて全面的に推奨するというものではない、とも指摘する。当然ながら、全ての人がペットとしての犬の世話ができるというわけではないからである。しかしながら、身体活動性を支援するという側面から言えば、犬を飼っていることが大きなアドバンテージになり得るという事は新しい知見であるのだ。
身体活動介入は典型的には、身体活動を行う人自身の自己目的的な利益、つまり身体活動を行う事によって健康になれるという目的を掲げて支援を行うというのが一般的であった。しかしながら、犬の散歩という変数は、自己の目的と言うよりはむしろ、伴侶動物の面倒を見るという点に同期づけられているという事が特徴的なのである。自己目的以外のものによって身体活動が促進されるという事実は、潜在的にはより現実的な動機づけである可能性があるし、将来的に新たな手法の介入研究を導く余地を生んでいるとも言えるのだ。出典は『疫学と共同体保健雑誌』。 (論文要旨)
今回の研究発表で分かったことは高齢の方で犬の散歩をしている人は、日常的に体を動かすことに抵抗がなく、天気に左右されることないので活動量が多くなる傾向にあるということです。自分のために運動するよりも、犬を散歩に連れて行く方が活動量を増やすことにつながるというのは驚きですよね。
日本では健康な体を維持するために、健康な方(18~64歳)なら強度が 3 メッツ※以上の身体活動を週に23 メッツ行うこと、具体的には歩行又 はそれと同等以上の強度の身体活動を毎日 60 分行うこと、65歳以上の場合は強度を問わず、身体活動を毎日40分(=10メッツ時/週)が推奨されています。(健康づくりのための身体活動基準2013)
※運動や生活活動(階段昇降や家事など)を運動強度の単位メッツ(METs)で表す
犬の散歩とメッツ一覧
安静時を1メッツとしたとき犬の散歩は3メッツにあたります。3メッツ以上の運動と生活活動はどんなものがあるのか少しご紹介しますね。
運動
3.0【バレーボール、ピラティス、ボウリングなど】
4.0【卓球、ラジオ体操第一】
4.3【やや速歩(平地、やや速めに=93m/分)、ゴルフ(クラブを担いで運ぶ)】
5.3【水泳(ゆっくりとした平泳ぎ) 、スキー、アクアビクス】
7.0【ジョギング、サッカー】
生活活動
3.0【普通歩行(平地、67m/分、犬を連れて)、電動アシスト自転車に乗る、家具の片付け、子ども の世話(立位)】
3.5【歩行(平地、75~85m/分、ほどほどの速さ、散歩など)、自転車に乗る(8.9km/時)、階段を下りる、 軽い荷物運び、床磨き、風呂掃除、庭の草むしり、子どもと遊ぶ(歩く/走る、中強度)】
4.0【自転車に乗る(≒16km/時未満、通勤)、階段を上る(ゆっくり)、動物と遊ぶ(歩く/走る、中強度)、高齢者や障がい者の介護(身支度、風呂、ベッドの乗り降り)、屋根の雪下ろし】
他の運動強度を詳しく知りたい方は厚生労働省のHPを参照してみて下さい。
まとめ
現在運動量が少ない人がいきなり23メッツ/週を目指すのはハードルが高いので、歩く速度を速めたり、階段を積極的に使う、遠回りして歩く距離をのばすなど、毎日できる範囲で活動量を増やす意識が大切ですね。犬の散歩のように毎日動かなくてはいけなくなるような仕組みづくりをするのも良い方法かもしれませんね!
参考文献
改訂版栄養の教科書 中嶋洋子監修
厚生労働省HP
健康づくりのための身体活動基準2013
Author Profile
- 管理栄養士
- 2010年管理栄養士を取得。社員食堂栄養士、栄養相談員、商品開発など経験するなかで「食べたものが自分をつくっている」ということを改めて実感し、食に関する知識や栄養のバランスがとれた食事の大切さを日々発信している。食いしん坊の1児の母。
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