HDLによる心血管疾患からの保護効果は、他の血液脂肪に依存して作用し、HDLが高濃度であるだけでは効果がないようだ、という米国メリーランド大学医療センターからの研究報告がありました。
何年もの間、医師たちは、HDL(高比重リポたんぱくコレステロール)は、心血管疾患(CVD)から保護するのに役立つと患者に伝えてきた。しかも、数が多いほど、保護作用があるものとされてきた。HDLは、多くの場合、心疾患の独立した予測因子と考えられ、保護効果があるために”善玉”コレステロールと呼ばれている。しかし、本研究では、HDLの保護作用が、心臓疾患に関連している2つの他の血中脂質の濃度に依存していることを初めて示した。これらの脂肪が正常範囲にないと、HDL高値であっても保護効果はないというのである。
結論:
・ HDLは、心血管リスクを一様に予測することはなかった
・ トリグリセリドおよびLDLにより、HDL低値とHDL高値いずれにおいても、心血管疾患の発症率が変化した
・ LDLとトリグリセリドのいずれか一方が高濃度、または両方が高濃度で存在すると、HDL低値による単独のものの作用と比較し、心血管疾患リスクは30~60%高くなった
・トリグリセリドおよびLDLが100 mg/dLを超えている場合には、HDL高値は心血管疾患リスクの減少とは関連していなかった2016.5.24 , EurekAlert より
出典『循環器:心血管性質と転帰』
HDLの効果
血液中には、コレステロール、リン脂質、トリグリセリド(中性脂肪)、遊離脂肪酸という脂質が含まれています。コレステロールは、細胞膜やホルモン、胆汁酸を作る材料になる大切な役割を持っています。HDLコレステロールは、コレステロールを運ぶリポタンパクの1つです。血管の掃除役で、血管にこびりついた余分な脂を取って肝臓や筋肉に運ぶ作用があります。動脈硬化のリスクを下げるので、HDLコレステロールは善玉コレステロールと呼ばれ、数値が高い方が良いとされています。
高すぎてもリスクあり
しかし、HDLコレステロールは、高すぎても良くないようです。HDLコレステロールの基準値は40mg/dl以上とされていますが、HDLコレステロールが100㎎/dlを超えた場合、高HDLコレステロール血症と診断されます。HDLコレステロールが多くなる原因として、遺伝、アルコールの過剰摂取、運動不足などが考えられ、更に、同時に中性脂肪も増加します。遺伝的に高い場合は、遺伝子の異常によるCETP欠損症の人が多く動脈硬化のリスクが高まることもあるそうです。
HDLの血管保護作用はLDLとトリグリセライドが正常範囲であること
HDLの保護効果を有効にするには、LDLやトリグリセライドの数値が正常範囲であることが必要となります。食物繊維の多い食品や、抗酸化作用のあるビタミンA・C・Eを含む食品、野菜や果物、きのこ、海藻、大豆、豆腐、ご飯、芋、そばなどのコレステロールのほとんどない食品を摂るようにするとよいでしょう。
まとめ
これまでHDLは、善玉コレステロールと言われ良い効果があるとされてきましたが、今回の研究では、HDLの数値が高くてもLDLやトリグリセライドの数値が基準値でなければ心疾患のリスクが減るわけではないとの結果が出ました。ですから、HDL、LDL、トリグリセライドのいずれの血中脂質も、脂質異常症診断基準の範囲内であることが望まれます。また、直接的に影響は出ませんが、塩分が多いと高血圧のリスクが高くなります。コレステロール値が高い人が高血圧を発症すると動脈硬化のリスクが高くなるので、減塩にも心がけましょう。
参考資料:最新版からだに効く栄養成分バイブル
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Author Profile
- 管理栄養士 / 調理師
- 総合病院にて厨房・調乳業務や個人病院にて栄養指導に従事。「栄養士は栄養学だけ。」にならない、おいしいレシピの提案を目指す。現在は、フリーランスとして書籍やコラムの執筆協力やレシピ作成等の活動をしている。
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