白米の栄養価を高める処理条件が明らかになった、という豪州チャールズスタート大学からの研究報告がありました。白米は、世界人口の3分の1以上が主食とするので、数十億人の慢性的な栄養不良への対策が一歩前進したことになるとのことです。
米を精米する前に、粒を湯通ししておくと、必須微量栄養素を保持できることが知られているが、研究チームは、豪州のシンクロトロンを使用して、湯通しの技術を比較した。高めの温度で長めに湯通しする過程で、より多くの微量栄養素が、外側のもみ殻から、穀物の芯のでんぷん質に移行することがわかったという。シンクロトロンを用いたX線蛍光顕微鏡のビームラインにより、米粒の内部構造に損傷を与えずに、サブミクロンの解像度レベルで栄養素の拡散を正確に追跡できる、とピーター・トーレイ博士は述べている。
「我々の実験で、90℃の湯に湯通ししてから蒸すと、最も効果的に栄養素を保持できることが実証された。」
「米の処理を改善することが、広範囲の栄養不良に対して我々が研究している2つの対策の1つめである。そして、2つめの対策は、成長過程や浸水過程で穀物の芯に、より多くの鉄やその他の重要な栄養ミネラルが含まれるように、米の品種の微調整を必要とする。これにより、白米の血糖指数(GI)も低下できる。
胚芽は栄養の宝庫
日本人の主食である米は、秋に稲を刈り収穫・脱穀をされ、籾の状態で貯蔵をします。籾だけを外したものが玄米、玄米を精製して胚芽やぬかを取り除いたものが白米(精白米)です。胚芽やぬかには、ビタミンB1などのビタミンや食物繊維、鉄や亜鉛、マンガンなどのミネラルが多く含まれており、精製されるとこれらの栄養素の大半がそぎ落とされてしまうことになります。ビタミンB1は、米などに含まれる糖質をエネルギーに変えるのを助けてくれる役割があります。また、血液中のヘモグロビンの主成分で酸素を運ぶ鉄、タンパク質合成や味覚を正常に保つ亜鉛、骨の形成や3大栄養素の代謝に関わるマンガンなどのミネラルも、体にとって欠かせない栄養素です。今回の研究では、精製される前に高温で水熱処理をするとミネラルが胚乳部に移行されることが分かり、今後の技術向上により、玄米と同様の栄養素を含む食味もよい精白米を食べられるようになることも期待できるのではないでしょうか。
主成分の糖質は脳唯一のエネルギー源
米の主な成分は糖質で、体内でブドウ糖に分解されて脳の唯一のエネルギー源となります。脳のエネルギー不足は、集中力や記憶力の低下、イライラの原因となるので、ご飯を食べることが大切です。
日本人の米離れ
日本人の米の1人あたりの摂取量は減少傾向にあり、農林水産省によると、昭和37年度の118.3kgより年々減少しており、平成17年度には61.4kgと半分近くにまで消費量が減っています。平成27年度では、56.1kgとさらに減少しています。しかし、米穀機構による米の消費動向調査平成28年4~12月分の調査結果では、「1人1ヵ月当たり精米消費量」は、各月の消費量を比較すると前年度より増加していて、平成28年度は米の消費減少に歯止めがかかるかもしれません 。
まとめ
和食がユネスコ無形文化遺産に認定され、世界から注目されています。和食に欠かせない米を中心として、おかずや味噌汁を組み合わせた栄養バランスの良い食事が長寿や肥満予防つながることが一つの要因です。日本では、パンや麺類を好む若い世代で米摂取量が少ない傾向にあります。いまいちど米食を見直し、米を食べる機会を増やしてみてはいかがでしょうか。
参考資料:
リンクdeダイエット http://www.nutritio.net/linkdediet_kyu/FMPro?-db=NEWS.fp5&-format=news_detail.htm&-lay=lay&KibanID=54760&-find食品成分表
農林水産省 http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kodomo_navi/learn/power01.html
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/fbs/attach/pdf/index-1.pdf
http://www.maff.go.jp/j/seisan/kikaku/pdf/data01.pdf
http://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/ich/pdf/naiyo_washoku.pdf
公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構(米穀機構) http://www.komenet.jp/pdf/shouhi-doukou_17012565.pdf
Author Profile
- 管理栄養士 / 調理師
- 総合病院にて厨房・調乳業務や個人病院にて栄養指導に従事。「栄養士は栄養学だけ。」にならない、おいしいレシピの提案を目指す。現在は、フリーランスとして書籍やコラムの執筆協力やレシピ作成等の活動をしている。
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