たんぱく質たっぷりのダイエット食で減量すると、睡眠の質が向上する―米国パデュー大学の研究が紹介されました。
予備実験において、たんぱく質を多めに摂っていた14人の被験者は、減量の4週間後に睡眠の質が良かったことがわかった。本試験では過体重か肥満の被験者44人を対象に、ダイエット食に対する慣らしを3週間を行った後2群に分け、16週間に渡って普通のたんぱく質量(体重1kgあたり0.8g)のダイエット食または高たんぱく質(体重1kgあたり1.5g)のダイエット食を摂ってもらった。そして試験期間中毎月、睡眠の質を評価することした。結果、高たんぱく食群の人は、3ヶ月目と4ヶ月目に睡眠の質が改善したことがわかった。ちなみにこの研究の食事管理にあたっては、栄養士が被験者一人ひとりに合わせた計画を練った。各被験者の必要量から脂質と炭水化物由来のエネルギーを1日当たり750kcal分減らした内容とし、たんぱく質量はそれぞれの群に合わせた量にした。また予備実験、本試験ともにたんぱく質の主要供給源は牛肉、豚肉、ダイズ、豆類、乳たんぱくとした。キャンベル教授は「この研究によって、ダイエット中の高たんぱく食のメリットを挙げるリストに、『睡眠の改善』が追加されました。これは、体脂肪減少や除脂肪体重の維持、血圧の改善といったことの促進も内包しているのです。」などと述べている。
2016.4.7 , EurekAlert より
出典は『米国臨床栄養学雑誌』。(論文要旨)
この研究結果から、たんぱく質をしっかりと摂取することで、睡眠の質も向上するということがわかりました。また、睡眠の質が向上すること自体もダイエットに影響があるといわれています。
睡眠不足が体脂肪に与える影響
食欲増進
胃から分泌されるホルモンのひとつ「グレリン」は、食欲を増進させ、成長ホルモンの分泌を刺激する作用を持つといわれていますが、睡眠不足は、このグレリンを増加させ、食欲増加から炭水化物の食べ過ぎにつながるといわれています。
冷えや代謝の低下
寝ている間に体温が下がり、起きると身体が温まる。このリズムが崩れ、代謝の低下や血流の滞留から冷えを引き起こしてしまいます。冷えはむくみや体脂肪の増加につながります。
夜中の飲食は脂肪蓄積につながりやすい
十分な睡眠を取らず、夜間に飲食はしていませんか?
22時から4時は肥満遺伝子が優位となり、脂肪細胞内で脂肪酸やコレステロールを合成する働きが活発化しやすくなります。
たんぱく質の量
「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると、一日あたりのたんぱく質平均必要量は成人男性で50g、成人女性で40gと定義されています。また、成人が一日に必要なたんぱく質は、一般的に体重1kgにつき1~1.2gとされています。今回の研究で睡眠の質が向上した群は体重1kgあたり1.5gの高たんぱく質食を摂っていました。例えば体重60kgの男性とすれば、90gのたんぱく質を摂取している計算となり、「日本人の食事摂取基準(2015年版)」に比べ、40gもたんぱく質が多いことがわかりました。
高たんぱく質食のデメリット
・たんぱく質は消化・吸収される際に胃腸など消化器官に負担がかかります。
・アミノ酸を尿素に変え、排泄するまでに、肝臓・腎臓も消耗することにもつながります。
・尿量が増加する事で、ミネラル類も身体から排出されやすくなります。
・たんぱく質のとりすぎは免疫系を刺激し、アレルギーや自己免疫疾患にも影響を及ぼすと考えられます。
・たんぱく質は1gあたり4kcal。取り過ぎはそれだけカロリーアップするため、体脂肪が蓄積してしまうことも。
・食事のバランスが崩れ、腸内環境が悪化する可能性もあります。
まとめ
この文献では、高たんぱく質のダイエット食は睡眠の質を向上させる可能性があることを示していました。睡眠の質の向上自体もダイエットには効果がありますので、高たんぱく質のダイエット食はダイエットにもメリットがあることが示されました。ですが、たんぱく質のとりすぎは、内臓への悪影響などのデメリットもあります。適正量を意識することが大切ですね。
(出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」より)
Author Profile
- 管理栄養士 / フードスタイリスト
- 食品メーカーでフードスタイリング・食卓分析・商品企画などの経験を積んだのち、フリーの管理栄養士として、栄養指導やダイエットカウンセリングのほか、健康関連のコラム執筆、レシピおこし・料理写真撮影など幅広く活動中。
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